第1回 睡眠の重要性(武蔵丘短期大学 教授 荒川崇先生)

第1回 睡眠の重要性(武蔵丘短期大学 教授 荒川崇先生)

第1回 睡眠の重要性

武蔵丘短期大学 健康生活学科健康スポーツ専攻
准教授 荒川崇

睡眠を取るために気を使っていることはありますか?
武蔵丘短期大学准教授に聞いてみました

今日は、ワールドカップで盛り上がったラグビーのU20日本代表ヘッドトレーナーとしても活躍され、現在、武蔵丘短期大学健康生活学科の准教授でもいらっしゃる荒川先生に、トレーナーの見地から睡眠と健康についてお聞きしてきました!

Guest

荒川崇
TAKASHI ARAKAWA

 

武蔵丘短期大学 健康生活学科健康スポーツ専攻 准教授
日本体育大学体育学部体育学科卒業(体育学士)
流通経済大学大学院スポーツ健康科学研究科修了(修士:スポーツ科学)
日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー
日本トレーニング指導者協会公認 上級トレーニング指導者
公益財団法人日本障がい者スポーツ協会公認 中級障がい者スポーツ指導員
日本ラグビーフットボール協会公認 有資格ヘルスケア専門家

 

<経歴>
2010年 日本ラグビーフットボールU20日本代表ヘッドトレーナー

先生が日頃、睡眠を取る際に気を使っていることはありますか?
睡眠時間、入眠時、目覚めの後など、ルーティーンなどがあればお願いします。

荒川:できる限り質の高い睡眠を取りたいと思っているので、普段は入眠時間を一定に保てるように心がけていますが、仕事の都合もあるので、最低でも3時間は睡眠を取るようにしています。カラダと脳を効率よくやすめる為に、レム睡眠とノンレム睡眠を繰り返す90分サイクルを気にしながら、最低でも3時間以上、90分の区切りで、4時間半、6時間と睡眠時間には気を使っています。

私は、暑がりで、寝汗を掻きやすいので、基本はTシャツに短パンでカラダに負担がない軽装でやすみます。それに合わせて季節ごとに寝具を変えていますね。また、寝る前と朝起きた後に、必ず水分摂取をして、睡眠中に汗をかいても大丈夫なように心がけています。

 

直里:先生はアルコールも嗜むようですが、それは水分じゃないですよね?(笑)

 

荒川:飲んだ後は、利尿作用も働いているので、余計、水分摂取が必要ですね(笑)

その時は、アルコールによる、利尿作用もカラダの水分を奪いますので、スポーツするわけではないのですが、電解質成分が含まれたスポーツドリンクを飲むようにしています。

あとは交感神経を高ぶらせる働きがあるので、スマホはなるべく見ないようにしています。

 

先生は健康生活学科健康スポーツ専攻とのことですが、健康生活と睡眠の重要性についてお聞かせください。

荒川:疲労回復のために、質の良い睡眠を取らないとカラダを害するということは先行文献にもありますが、睡眠時間が少なくなると、ホルモンバランスが崩れ、食欲が増す働きが強くなり、先々の生活習慣病にもつながってきますので、できる限り、質の高い睡眠を取ることが健康には不可欠だと思います。

文献によると4時間以下と10時間以上の睡眠では疾病を引き起こしやすいと言われているので、レム、ノンレム睡眠のサイクルとカラダの疲労回復の点でいうと、最低でも6時間以上の睡眠が望ましいと思います。

 

直里:逆に、睡眠を促すための運動はなにかあるのですか?

 

荒川:単純に肉体疲労を考えれば、日中に30分以上の軽運動、入眠を促す運動としては、交感神経や副交感神経を昂る運動はよろしくないので、刺激しない運動としては、精神的にリラックス効果のあるスタティックストレッチと言って、姿勢を保持して、深く呼吸をしながら行うストレッチです。

できるだけ大きな筋肉を使って、15秒から30秒ほどストレッチすることで睡眠の質を高めることにつながります。

 

先生が今お使いの枕(寝具)はどのような枕ですか?
また、なぜその枕をお使いになっているのか。

荒川:今、使っているのは以前、頂いたナオ・シングの「男枕」を使っています。

首後ろのサポートが私には合っていますので、気に入って使っています。

出来レースのようですが・・・(笑)

 

直里:ありがとうございます。先生にご協力いただいた枕でしたね。(笑)
高さ調節が可能な枕ですが、いかがですか?

 

荒川:枕は高さが重要なので、高さの調整が自分用に簡単に調整ができるのがいいですね。数回調整しながら試寝して使っています。私は入眠時の姿勢が、左を下にして横向きで寝るのですが、丁度良く支えられて快適です。

 

枕選びで悩まれている方の多くが、肩こりや首の張りを訴えるのですが、考えられる原因を教えてください? また、寝違いはなぜ起きるのでしょうか?

荒川:肩こりや首の張りは、枕の高さ、肩の高さ、首の高さと頭の位置が合致していない状態だと、頚部や僧帽筋に小さなストレスを与えており、それが長時間にわたると大きなストレスになって、筋膜の張りが起きるのが原因の一つになります。なので、枕の高さとサポートの範囲に着目して枕を選ばなければ、肩こりや首の張りの原因にはなりやすいですね。

 

荒川:また。寝違いに関しては色々な説があり、一般的に言われているのはその人の寝姿勢の状態にもよるのですが、寝返りを上手く打てないのが要因の一つになります。柔らかめの枕やベッドは、身体が沈んでしまい寝返りが上手く打てない、例えば動いても身体は動かずに頭部だけ動くと、ひねった状態になって筋肉への緊張が長時間続き、ハリのような症状が残ったりします。

また、枕の高さが合わないと、7つある頚椎の間にある椎間関節にストレスを与え続けてしまい、その関節を包んでいる関節包に炎症が起こって痛みと化して現れることもあります。

関節包の炎症や一定姿勢でのひねり、または一定姿勢による血液の阻血による血行循環の不良も原因の一つと考えられます。

 

直里:首と肩回りって、いくつの筋肉があるのですか?

 

荒川:一般的には表層の筋肉(アウター)と言われる筋肉は主に僧帽筋、胸鎖乳突筋の他、全部で5つあります。(合計7つ)

 

直里:その表層筋が肩こりを引き起こしているのですね。

 

荒川:それぞれの表層筋の疲労が肩こりの原因に関わるものと言われています。

 

 また、睡眠中に足がつる、こむら返りなどの症状で目が覚める方がいますが、考えられる原因は何でしょうか?

荒川:こむら返りとは、一般的に言われているのは、水分、電解質成分の不足損失で、筋肉が痙攣してしまうこと。その場合は、就寝時に電解質成分を含んだ水分を摂取することで、症状は多少緩和されるかもしれません。

また、強い疲労があった場合にも、筋の緊張が高まって痙攣を起こすことがあります。もう一つ、加齢によって脳からの伝達が上手くいかなくてこむら返りを起こすことは、特に高齢者には多く見受けられます。

 

先生が理想と思える寝具(枕)とは?

荒川:理想の寝具と言うと、難しいですね。

カラダへの負担がない、個々のカラダの形状にフィットして、頸部のサポート、肩のサポートができるマットレスや枕があればいいのですが。

掛け寝具はできるだけストレスを感じない軽量なもので、夏は涼しく、冬は暖かいもの。

マットレスはソフト、ソフトと言っても単に柔らかい意味ではなく、あたりが強すぎずという感触です。自分自身が腰椎椎間板ヘルニアを持っているので、腰椎の前弯を助長するような、強く負荷を感じるものは避けています。緩やかにカラダにマッチするものがいいですね。

 

直里:最近オーダーメイドの枕やマットレスなどありますが先生は興味ありますか。

 

荒川:興味はあります、でも、まだ持っていません。(笑)

 

直里:オーダーメイドにしなくても、合うものがあればいいですからね。

 

荒川:今、ダブルベッドを使っているのですが、フルオーダーとなると難しいですね。

合うマットレスがなかなか見つからなくて。寝具売り場があると積極的に寝転んでいます。

 

 

 睡眠の質を高めるに、寝姿勢に関して気をつけるポイントがあればご教示ください。

荒川:先ずは、それぞれの体型に合った寝具を使うこと。
また、カラダの一部、局所的に負担がかかるような寝姿勢は避けた方がいいですね。
私としては側臥位(横向き)で眠ることをお薦めしたいです。

 

直里:側臥位(横向き)で寝ると、身体が丸まるじゃないですか?体を緩めることが必要とのことですか?

 

荒川:股関節、膝関節を軽く曲げた状態をニュートラルな状態と言いますが、関節を軽く屈曲させることで、体全体が落ち着いて姿勢も安定します。

 

直里:では、仰臥位(仰向け)はあまり楽にできないということでしょうか?

 

荒川:そんなことはないですが、仰臥位(仰向け)だと、背中の部分と、臀部に荷重が集中してしまうので、より負荷が均等にかかることを考えると側臥位(横向き)の方がいいのではないでしょうか。

 

直里:仰向け姿勢で寝具を選びがちですが、それぞれの日常生活や体のコンディションによって、寝具を選ぶことは重要なのですね。参考になりました、本日は、お忙しいところ、ありがとうございました。

 

■ まとめ

皆さんもお悩みの肩こりには、睡眠中の寝返りのしやすさがかなり影響するのですね。
また、横向き姿勢ではカラダが自然に丸まるニュートラルの姿勢がカラダを休めるには重要とのこと。枕で頭や首をどう支えたらいいのか、今後の枕づくりのヒントを頂きました。
また、睡眠環境はもちろんですが、寝る前のストレッチや水分補給などにも普段から気を遣うことも、睡眠の質を上げることが大事ですね。
荒川先生、ありがとうございました。